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顎関節症の原因は生活習慣病?症状や治療法を解説

「口を大きく開くとあごが痛い」「耳の横の関節から音が鳴る」といった症状があらわれたら、それは顎(がく)関節症かもしれません。

一生のうちに、症状の差はありますが、2人に1人は経験するという一般的な病気です。

放っておいても命に関わることはありませんが、「物が食べにくい」「話がしにくい」など、日常生活に支障が出てしまうことも多くあります。

顎関節症は、普段の生活習慣が原因となっていることも多く、病院での治療とともにセルフケアや自己管理も重要です。

今回は、顎関節症の症状や原因、治療法に加え、セルフケアの方法について解説しましょう。

顎関節症のおもな症状

顎関節症とはあごの関節や、あごを動かす役割の咀嚼筋に異常が起こることでさまざまな症状を引き起こす病気です

10代半ばから患者が増加し、20~30代にもっとも多く発症します。

また女性患者が、男性に比べ2~3倍ほど多いのも特徴です。

代表的な症状としては以下の3つが挙げられますが、どれか1つの症状だけがあらわれるよりも2つ以上の症状が重なるケースの方が多く見られます。

あごが痛む(顎関節痛、咀嚼筋痛)

口を開けると、耳の横にある顎関節や咀嚼筋が痛み、ときにはこめかみや頬まで痛むこともあります。

口が開かない(開口障害)

正常であれば、人差し指と中指、薬指を縦に揃えて口に入れることができますが、入らない場合には、顎関節や咀嚼筋に何らかの異常があると考えられます。

症状がひどい場合には、指1本分くらいしか口が開かないこともあります。

あごを動かすと音がする(顎関節雑音)

首や肩を回すと音がすることがありますよね。

それと同じように、あご(顎関節)を動かすことで音が発生する場合もあります。

口を大きく開けた際などに、「カクンカクン」や「ガリガリ」といった音が聞こえた経験がある方も多いのではないでしょうか?

首や肩と違う点は、顎関節が耳のすぐそばにあり、音が大きく聞こえてしまうということです。

しかし、痛みを伴わず、音だけの症状であればとくに治療の必要はありません。

顎関節症セルフチェック

とくに自覚症状がない場合でも、発症する可能性が潜んでいることもあります。

該当する点がないか、以下の表でチェックしてみましょう。

  • 食べ物を噛んだり、長い間しゃべったりすると、あごがだるく疲れる
  • あごを動かすと痛みがあり、口を開閉すると、とくに痛みを感じる
  • 耳の前やこめかみ、頬に痛みを感じる
  • 大きなあくびや、りんごの丸かじりができない
  • ときどき、あごがひっかかったようになり、動かなくなることがある
  • 人さし指、中指、くすり指の三本を縦にそろえて、口に入れることができない
  • 口を開閉したとき、耳の前の辺りで音がする
  • 最近、あごや頸部、頭などを打ったことがある
  • 最近、かみ合わせが変わったと感じる
  • 頭痛や肩こりがよくする

引用:慶應義塾大学病院|顎関節症の自己チェック

思い当たる症状はありませんか?

該当する点が多ければ、今は痛みなどを感じることがなくても、いつ顎関節症となっても不思議ではないかもしれません。

顎関節症の原因

顎関節症は、以前は噛み合わせの異常が原因とされていました。

しかし現在では、噛み合わせでなくさまざまな原因が重なって起こると考えられ、いくつもの原因が同時に集まり、関節や筋肉の耐久力の許容範囲を超えると発症します。

顎関節症の原因
  • 顎関節や咀嚼筋の構造的な弱さ
  • 転倒や打撲で顎関節を傷つけた
  • 日中や夜間の歯ぎしり
  • 緊張した状態の持続
  • 片側での噛み癖
  • 頬杖
  • 精密作業

この他にも、さまざまな要因が考えられますが、最大の要因とされているのが、「歯列接触癖(TCH)」です。

必要のないときでも上下の歯を接触させている状態で、何気ない行動のように思えますが、顎関節や筋肉に持続的に大きな負担を与えています。

顎関節症患者の8割近くが、口を閉じているときに同時に上下の歯もくっつけている癖を持っているという調査結果もあります。

子どもにも増えている顎関節症

最近は、小学校高学年くらいの子どもから顎関節症の症状を訴えて受診することも増えてきています。

原因としては、食生活の変化により、噛み応えのある物を食べる機会が少なくなり、あごの骨や筋肉があまり発達していないことや、片方の歯ばかりで噛む片噛みの癖などが挙げられます。

また、ストレスによる睡眠中の歯ぎしりや食いしばり、長時間ゲームで遊ぶことなどで強い噛み締めやうつむき姿勢となることなどが原因となることも多く、現代の子どもたちは、顎関節症の発症リスクが高いといえるでしょう。

顎関節症かも?と思ったら

顎関節症かも?と思ったら、少し様子を見てみましょう。

もちろん痛みがひどく、口が開かないといった重症の場合には、医師への受診が必要です。

しかしそうでない場合、意識してあごへの負担を減らすことで、自然と症状が緩和されることも少なくありません。

まずは落ち着いて、あごの関節や筋肉に負担をかけない生活を1週間ほど心がけ、それでもよくならないようであれば、歯科医院を受診してみましょう。

顎関節症の診断

あごの痛みや口が開かないといった症状は、顎関節症による場合だけでなく、親知らずなど他の病気でも似たような症状が出ることがあります。

そのため、まずは診察や検査を受けて、顎関節症かどうか診断してもらいます。

問診やあごの動きの検査、痛みの検査、骨に異常がないか診るためのレントゲンやCT検査などをおこないます。

また、必要に応じて、関節の構造や筋肉の異常を調べるためのMRI検査をおこなうこともあります。

顎関節症の痛みには、心理的や社会的な原因が強く関係することもあるため、心理テストを使って検査することもあります。

顎関節症の治療法

症状の程度にもよりますが、一般的にはスプリント(マウスピース)によって治療をおこないます。

上あご、もしくは下あごの歯の上からプラスチックの装置をかぶせて、睡眠中の食いしばりを防ぎ、あごの関節や筋肉への負担を減らす方法です。

また、痛む部位へレーザー照射をおこなったり、電気刺激を与えて筋肉の血流を改善したりといった方法が治療がおこなわれることもあります。

これらの治療法で、ほとんどの場合は改善に向かいますが、あごの骨の変形が大きいなどの場合、手術せざるをえない場合もあります。

非常にまれなケースですが、専門医のいる口腔歯科外科での相談をおすすめします。

顎関節症では、積極的なセルフケアが重要

顎関節症では、きちんと治療を受けることはもちろん、積極的なセルフケアが大変重要です。

セルフケアなしでは、症状が完全になくなることはないと考えられます。

医師の指導のもと、正しくおこなうようにしましょう。

症状が強い急性期には無理をせず

口を動かさなくても痛みがあるような急性期には、無理に動かすことは禁物です。

大きい口を開けるのを防ぐため、食べ物は小さく切り分ける、硬い食品は避けるなど心がけましょう。

あくびをする場合は、下あごの下にげんこつを添え、大きく口を開けるのを抑えます。

また氷水を入れたビニール袋などで痛む箇所を10分を限度として冷やし、その後ゆっくり口を開け閉めし、顎関節を動かして筋肉を引伸ばす動作を繰り返しましょう。

少しずつ症状が和らいでくるはずです。

症状が落ち着いてきたら

症状が落ち着いてきたら、蒸しタオルを当てて温めたり、親指の付け根などでゆっくり押し回してマッサージしたりなどするとよいでしょう。

激しくもんだりつまんだりするのは逆効果となります。

また、指を3本縦にして口に入れ、筋肉がつっぱるのを感じながら5秒間そのままにしてストレッチをするのも効果的です。

生活習慣を見直そう

顎関節症のセルフケアは、あごに負担をかけないことが基本です。

そのためには、生活習慣の見直しが大切。

自分自身が気づいていない無意識におこなっている行動や姿勢、習慣などが症状を引き起こしていることも多く、まずはどのような行動が顎関節症を引き起こしているかを知りましょう。

顎関節症を引き起こす行動
  • 必要ないときに上下の歯を接触する
  • 頬杖をつかない
  • 片側だけで噛まない
  • 精神的にストレスのかかる場所から離れる
などあごや精神に負担をかける行動を意識しておこなわないように気をつけましょう。

まとめ

顎関節症は、生活習慣が引き起こす病気のひとつです。

私たちが何気なくおこなっている毎日の行動や習慣が、あごに大きな負担をかけている場合も少なくありません。

まとめ
  • 顎関節症は20代~30代が発症しやすい
  • 顎関節症の主な原因は無意識に上下の歯を噛みしめること
  • 顎関節症の多くはあごの負担を軽くすれば自然と治まる

顎関節症はセルフケアや自己管理の徹底で、多くの場合は数ヶ月から半年ほどでほとんどの人が改善に向かいます。

顎関節症の症状を引き起こさないためにも、意識してあごへの負担を減らすようにし、気になる点があれば、かかりつけの歯科医へ相談しましょう。

ABOUT ME
【執筆・監修】医療法人あだち耳鼻咽喉科 院長 安達一雄
日本耳鼻咽喉科学会 / 専門医・指導医 身体障害者福祉法第15条指定医
補聴器認定医 / 補聴器適合判定医 / 九州大学耳鼻咽喉科 特任助教
国際医療福祉大学非常勤講師