医療法人あだち耳鼻咽喉科

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『声帯を壊す』とは?声の出しすぎ・使いすぎによる声帯の病気あれこれ

『ミュージシャンや歌手が声帯を痛めて休養』というニュースをよく耳にしますよね。

しかし声が嗄れる、出なくなるとは具体的にどのような病気を指すのか、意外とご存じない方も多いのではないでしょうか?

また声を職業にしている人だけでなく一般の私たちも、スポーツ応援の翌日や風邪にかかるなどが原因で声帯にトラブルを抱えることも少なくありません。

今回は声の出し過ぎによって引き起こされる声帯の病気について解説しましょう。

声帯とは?声が出る仕組みについて

声帯は気管の入り口の左右にあり、粘膜に覆われた筋肉や靭帯でできたひだで、声を出すための器官です。

普段の呼吸時には声帯は開いた状態ですが、発声の際にはぴったりと閉じ、吐く息によって振動することで私たちは声を出してます。

ちょうどのど仏の裏側にあるため、声を出しながらのど仏を触ると、声帯が振動しているのが伝わるのが分かる場合もあります。

声帯は発声に関わる重要な器官です。

そのため『声が出ない』『声がかすれる』といった声に関する異常が見られる場合には、声帯にトラブルがある場合が少なくありません。

声帯ポリープ・声帯結節

よく耳にする声帯のトラブルには『声帯ポリープ』や『声帯結節』が挙げられます。

詳しくみていきましょう。

おもな症状は声がれ

声帯ポリープ・声帯結節ともにおもな症状は声がれ(嗄声=させい)です。

原因は声の使いすぎ

声帯ポリープ・声帯結節はおもに声を出しすぎる人におこりやすくポリープは声帯の血管が破綻してできる血腫(いわゆる血豆)であり、結節はタコのような突起物で、左右の声帯が音声の酷使により頻回に接触することで生じます。

また声の酷使だけでなく、風邪や喫煙習慣が原因となる場合も少なくありません。

ポリープは左右どちらかの声帯にできるのに対し、結節は両方の声帯にできるケースが多くみられます。

本来は声帯の縁はまっすぐですが、ポリープや結節ができることで、声帯がぴったりと閉じなくなり、振動に支障が生じたり呼吸が漏れることで、、声に変化が起きてしまいます。

声帯は1秒間に100〜300回も振動しながら声を作り出し、もともと痛みを感じない器官です。

そのためポリープや結節ができても痛みなどはなく、声がかれる症状があらわれてようやく声帯の異常に気づく場合もよくみられます。

ミュージシャンや歌手だけの病気ではない

声帯結節は先生や保母さん、営業職など声を多く使う職業に就いている人に多く、また声帯ポリープは急に大声を出すことがきっかけになることも多く、スポーツ観戦やカラオケで大声を出したことをきっかけに発症することもあります。

また子どもにみられる『小児声帯結節』もあり、多くの場合野球やサッカーといったスポーツをする際の大声が習慣化してしまうことが原因で発症します。

検査や治療法

声帯ポリープ・声帯結節は、ファイバースコープで声帯の様子を観察したり、喉頭ストロボスコピーで声帯の振動をみたりする検査で診断をおこないます。

いずれも初期の段階であれば炎症を抑える薬や、ステロイドホルモンの吸入などの保存的治療で改善に向かう場合も多くみられます。

またできるだけ声を出さずに過ごし、声帯を安静に保つことも重要です。

また、発声様式を整えるようなリハビリ(音声リハビリテーション)で改善することも少なくはありません。

しかしこれらの保存的治療では改善しない場合には、手術による治療を検討します。

手術による治療をおこなうことも

声帯ポリープ・声帯結節ともに手術は全身麻酔で、ラリンゴマイクロサージェリー(喉頭顕微鏡下手術)をおこないます。

顕微鏡で喉を拡大して見ながらおこなう手術で正確にポリープや結節を除去でき、成功率も非常に高いものです。

術後は1ヶ月ほど声を出すのを控え、安静に過ごさなければなりません。

声帯結節は手術で完全に除去しても、再発のリスクがともないます。

そのため、術後の音声の安静やリハビリなどのケアが重要です。

治療や手術で改善されても、また声を酷使すれば同じようにポリープや結節の再発につながります。

再発を防ぐためには声帯に負担をかけないことが重要です。

大声を出さない、どならない、長時間話し続けないなどが重要ですが、職業上難しいことも多いですよね。

そのような場合には声の出し方が原因のケースもあるため、発声方法にも注意を配ることも重要です。

またこまめに水分をとる、加湿器を利用する、マスクを着用するなど声帯が乾燥しないようにすることも効果的です。

声帯炎

声の使いすぎが原因となる疾患には声帯ポリープや声帯結節の他にも、声帯に炎症が広がる声帯炎も挙げられます。

声帯炎の症状や原因、治療法についてみていきましょう。

症状

声帯炎には急性と慢性があり、症状としては声がれや声の出しにくさを認めます。

原因はさまざま、タバコや飲酒が悪化の原因となることも

声帯炎は声帯が炎症を起こして腫れることによって引き起こされます。

大声を出したり長時間しゃべりつづけたりすることが原因となるケースも多く、声を職業としている人は高い発症リスクがあります。

他にもウイルスや細菌感染で引き起こした咽頭炎や喉頭炎が声帯まで広がることや、喫煙・飲酒によって声帯に負担をかけることなども原因に。

ミュージシャンが声が出なくなりコンサートが延期されたりするような場合は、声帯炎が原因であることが多いと思われます。

とくに慢性声帯炎の場合には喫煙や飲酒、音声の酷使の影響が大きい場合が少なくありません。

治療法

検査や診察で声帯炎があるのを確認できたら、炎症をおさめるための抗生剤や炎症を抑えるようなステロイド等の服用や吸入といった治療がおこなわれます。

また、症状が高度の場合は点滴による治療を行う場合もあります。

しかしもっとも重要なことは大きな声を出さないない、長時間話し続けないなど、声の安静を保つことです。

あわせてマスクをしたり加湿器を利用したり、吸入を行ったり、喉の乾燥を防ぐことも重要。

また慢性声帯炎の場合には喫煙や飲酒の習慣を見直すことも必要です。

声の異常は命にかかわる病気のことも

声がかすれる、声が出にくいなどの症状が出る病気は、声帯ポリープ・声帯結節・声帯炎だけではありません。

次のような命にかかわる病気や重篤な病気の可能性もあります。

喉頭がん

声帯ポリープや声帯結節だと思っていたら、喉頭がんが隠れていたというケースは珍しくありません。

声帯とその周りにできるがんで、かすれ声が続き、進行すると呼吸困難やリンパ節の腫れを引き起こします。

発見が遅れると転移が進み、命にかかわる場合も多くあります。

反回神経麻痺

声帯の動きをつかさどる反回神経が麻痺することで声に異常があらわれる疾患です。

脳や肺、胸の疾患が原因の場合が多く、全身をきちんと検査する必要があります。

また、誤嚥をひきおこしたり、それに伴い肺炎を生じるような場合もあります。

甲状腺腫瘍や肺がん、食道がん、動脈解離といった大きな病気が背景にある場合が多く、早めに医師へ相談することが重要です。

まとめ

声を出しすぎた翌日や風邪などで、声がかすれたり出にくかったりするのはよくあることですが、症状が続くようであれば、声帯ポリープや声帯結節・声帯炎などが原因のことも。

いずれもまずは声の安静を保ち、それでも改善しない場合は耳鼻科での診察を受けることが重要です。

また、治ったからといって、以前のように声を酷使し続けると再発する可能性も高いため、注意が必要です。

とくに声を使う職業の場合には、乾燥の防止および音声の安静が重要です。

また声の異常の裏側には、命にかかわる病気が隠れているケースも珍しくありません。

喉の違和感や声の異常が続くようであれば、できるだけ早く耳鼻咽喉科へ相談することをおすすめします。