医療法人あだち耳鼻咽喉科

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子どもの難聴の種類や原因は?早期発見のポイントや予防策について

子どもの難聴は決して珍しいものではなく、新生児の1,000人に1〜2人ほどという比較的高い割合でみられます。

また生まれつきだけでなく、成長の過程で難聴となってしまうケースも少なくありません。

いずれの場合においても、聞こえは子どもの成長に大きく関わるため、できるだけ早い発見と治療や対応が必要です。

今回は子どもの難聴をテーマに原因や種類、早期発見のポイント、予防策などについて解説します。

子どもの難聴は「先天性」と「後天性」に分けられる

子どもの難聴には生まれつきの「先天性」と、成長の過程で聞こえが悪くなる「後天性」に分けられ、それぞれ次のような原因があります。

先天性の場合は遺伝や妊娠中の感染が原因

子どもの難聴は、遺伝的な原因の場合が全体の3分の1を占めています。先天性の難聴の6割近くが遺伝的な原因であるともいわれています。

とくに高度な難聴では、遺伝的な原因が半数以上を占めるとも考えられています。

しかし実際に難聴の子どもが生まれた家庭に家族や親戚に難聴者が必ずいるとは限りません

そのようなケースよりも、父親と母親の遺伝子が偶然に組み合わさったことが原因の場合が多くみられます。

実際に難聴の子どもを持つ両親の9割近くが聞こえに問題がありません。

また母親が妊娠中にかかった疾患などが原因の場合も多くみられます。

風しんやサイトメガロウイルス、トキソプラズマ、ヘルペス感染、梅毒などがおもな原因として知られています。

他にも37週未満での出産や、耳の穴が塞がっていたり、鼓膜の内側の構造が変形していたり、神経が未完成だったりといった奇形が難聴の原因となることもあります。

後天性の場合は中耳炎などが原因

後天的に聞こえが悪くなる子どもの難聴の原因でもっとも多いのが中耳炎です。

耳の奥にある「中耳」が細菌やウイルスに感染し、炎症を起こしてしまう病気で、小学校に上がるまでに約60%の子どもがかかるといわれています。

生後半年くらいから1〜2歳くらいの時期までにかかることが多く、悪化することで聞こえに大きく影響することも少なくありません。

2〜6歳の難聴の子どもの大部分を占めるのが滲出性中耳炎で、程度は軽いものの、数年に渡る場合も多く、ことばの習得に影響を与えることも。

また髄膜炎によって中耳障害が引き起こされ難聴になったり、おたふく風邪にかかり片方の耳がまったく聞こえなくなってしまったりするケースもあります。

他にも麻疹や水疱瘡といった感染症や、さまざまなウイルスや菌への感染、頭部のケガ、ストレプトマイシンといった抗生物質が原因となる場合もあります。

一方でまったく原因がわかっていないケースも全体の3分の1にのぼります。

子どもの難聴はいくつかのタイプに分けられます

難聴とは、耳がキャッチした音の情報を脳に送る途中、どこかに障害があることで聞こえにくくなる病気です。

次のように障害のある部位、原因によって、いくつかのタイプに分けられます。

1.伝音性難聴

伝音性難聴とは、外耳(耳の穴)から中耳(鼓膜の奥)のどこかに問題があり、音の電動を障害をおこしていることが原因の難聴のことです。

耳垢が詰まっていたり、鼓膜に傷がついていたりといったケースが多くみられます。

また中耳炎による難聴もこのタイプが多く、中耳に水や膿が溜まることで聞こえに影響します。

また、先天的な耳小骨(音を伝える中耳の中にある骨)の奇形で難聴があるような場合も、このタイプです。

伝音性難聴は一時的な症状のことがほとんどで、薬や手術などの治療での改善が可能な場合が多いです

2.感音性難聴

感音性難聴とは、中耳のさらに奥にある内耳と呼ばれる部分に障害が起きることが原因の難聴です。

遺伝や母親の妊娠中の感染が原因の難聴は、このタイプです。

脳に音の信号を伝える神経などに障害が起き、薬や手術といった治療では治りにくいのが特徴。

難聴の程度にもよりますが、中程度以上であれば補聴器や人工内耳などで聞こえを補います。

3.混合性難聴

伝音性と感音性が混合したタイプの難聴です。

もともと感音性難聴であり、さらに中耳炎などで伝音性の難聴もある際に引き起こされます。

4.心因性難聴

基本的に聴覚機能的には問題がないのに、難聴を自覚したり、また、難聴の自覚がない場合でも聴力検査上難聴を認めるような病気です。

通常の聴力検査では難聴を認めますが、聴性脳幹反応検査(ABR)では正常聴力を示します。

精神的ストレスなどが原因となることが多いため、カウンセリングが治療の中心となります。

時間がかかる場合もありますが、心理的要因が解消されることにより、多くの場合改善を認めます。

子どもの難聴は早期発見がポイント

子どもの成長に聞こえは大きな影響を与えます。

聞こえが悪いまま放っておくと、学校での授業についていけないなどの問題が起こることも少なくありません。

赤ちゃんのうちからさまざまな音を聴くことで、子どもは少しずつことばを習得するため、難聴の疑いがあればできるだけ早く検査をおこない、治療や言語指導を受ける必要があります。

難聴があっても早いうちから治療をはじめれば、ことばやコミュニケーション能力は聞こえに問題のない子どもと同程度に習得することが可能です。

高度難聴であれば、生後6ヶ月ごろまでには補聴器をつけ、1歳6ヶ月ごろまでには言語指導を開始するのが理想的と考えられています。

そのためには難聴であることを早期発見することが重要。

生まれたばかりの赤ちゃんにおこなう「新生児聴覚スクリーニング検査」を受けたり、普段の生活の中で難聴が疑われる行動がないかチェックしたりすることが有効です。

それぞれについて詳しく説明しましょう。

新生児聴覚スクリーニング検査

「新生児聴覚スクリーニング検査」は生まれてすぐの赤ちゃんが、音に対してどのように反応するかについてコンピューターを用いておこなう検査です。

生後すぐの入院中におこなうのが一般的で、痛みなどもなく、赤ちゃんが寝てる間に簡単に終わります。

しかしこの検査は赤ちゃんに難聴があるかどうかを調べるものではなく、あくまでスクリーニング(選別・振り分け)するためのものです。

そのため必ずしもスクリーニング検査でリファー(再検査)になったから難聴、というわけではありません。

聞こえが正常な赤ちゃんであっても、羊水や耳垢が溜まっている場合にはリファーとなるケースもあります。

あくまで精密検査を受けるための検査、と考えておくとよいでしょう。

子どもの難聴を疑うサイン

ほとんど音が感じられない高度な難聴は周囲が比較的気づきやすいものの、中程度の難聴の場合には、身近な親であっても気づかないことがあります。

片側だけの難聴であればさらに気付きにくく、小学校の就学時健診で判明することも。

次のような「おかしいな?」と思うような子どもの行動があれば、それは難聴を疑うサインかもしれません。

  • 大きな音でもびっくりしない
  • 生後6ヶ月を過ぎても音がする方向に顔を向けたり、聞こえた音の真似をしたりしない
  • 生後9ヶ月でおしゃべりをしない
  • 3歳までに単語を話さない
  • 他の子どもと比べておしゃべりの数が少ない
  • なんども聞き返してくる
  • テレビの音がいつも大きい

また1歳半や3歳での検診でも聞こえの検査をおこない、耳鼻科の受診をすすめられる場合もあります。

気になる点があるなら、できるだけ早く相談することをおすすめします。

子どもの難聴の治療方法

中耳炎や鼓膜に傷がついていたり耳垢が溜まっていたりする伝音性の難聴であれば、薬での治療や手術、耳垢を取り除くことで、聞こえは改善に向かいます。

しかし内耳に異常がある感音性難聴の場合には、薬や手術などでの治療はほぼ難しいのが現状です。

とくに高度や重度の難聴では、補聴器や人工内耳を使って聞こえを補う必要があります。

それぞれについて解説しましょう。

補聴器

補聴器は耳に装着して音を増幅させる電子機器のことで、乳幼児期からつけることができます。

手軽で子どもにも負担が少ないものの、はじめのうちは違和感などから外してしまうことも多く、慣れるまでに時間がかかることも。

しかし子ども自身も徐々に「これは必要なものだ」ということが理解できてくるので心配はいりません。

耳穴式や耳掛け式、ポケット型、骨伝導式などさまざまあり、子どもの年齢や発達状況などによって適切なタイプのものを選ぶことが大切です。

人工内耳

両耳ともに重度の難聴で補聴器では聞こえの改善が見込めない場合、人工内耳を埋め込む場合があります。

これまで重度難聴の場合には手話や筆談などがメインで、音声でのコミュニケーションは難しいとされてきましたが、人工内耳によって耳で聞いて話すことができるようになりました。

1歳以上(体重8kg以上)から手術は可能で、全身麻酔でおこない、耳の後ろを切開して人工内耳を埋め込みます。

2〜4週間ほどの入院が必要であることと、その後のリハビリがとても重要となります。

予防できる子どもの難聴

子どもの難聴を予防するためには、次のような子どもまたは妊婦さんが原因となる病気にかからないことが重要です。

ここでは代表的な3つの病気についてみてみましょう。

中耳炎

後天性難聴の大きな原因である中耳炎は、風邪や感染症の後に発症するケースが多くみられます。

なんども中耳炎を繰り返す、いつまでも治らないといった場合には、難聴を引き起こしているおそれも。

中耳炎にかかったら、聞こえが悪くなっていないかどうかチェックしてみましょう。

おたふく風邪(ムンプス)

おたふく風邪に感染するとムンプスウイルスが内耳炎を起こすことにより、稀に難聴となり、片方の耳がほとんど聞こえなくなってしまいます。

治療で治すことは難しく、残念ながら後遺症として一生残ります。

ワクチンを接種することで90%以上の発症を防げるとされていますが、現在定期接種ではなく任意接種のため、接種率は3〜4割と高くありません。

ワクチン接種ではなく、感染して免疫をつけようと考えるのは非常にリスクが高く禁物なので、やめましょう。

おたふく風邪が難聴を引き起こすことをきちんと知り、ワクチン接種で予防することが大切です。

先天性風しん症候群

妊娠初期に風しんにかかると、高い確率で胎児が先天性風しん症候群となり、難聴をはじめとするさまざまな疾患を持って生まれてきます。

風しんもおたふく風邪と同様に、ワクチンで予防できる病気です。

しかし風しんは度重なる法改正などにより、ワクチンを接種していない世代が生まれ、ちょうど現在妊娠に関わる世代と重なっています。

妊娠を検討している女性だけでなく、男性もワクチンを接種することをおすすめします。

まとめ

難聴は生まれつきの障害のなかでも、もっとも多くみられるもののひとつ。

そのため新生児聴覚スクリーニング検査をはじめ、さまざまな検査体制が敷かれ、難聴の可能性がある場合にもしっかりと対応できる仕組みが確立しています。

難聴は目で見て分かる障害ではありませんが、放っておくと子どもの発達に大きな影響を与えてしまうため、早期発見が非常に重要です。

同時に難聴になるおそれのある病気については、しっかりと予防するようにしましょう。

難聴の種類や聞こえのレベルに応じて、治療をおこなったり補聴器や人工内耳の助けを借りたり、また適切な言語指導をおこなうことで、ことばはきちんと発達します。

子どもの聞こえに少しでも不安を感じたら、耳鼻咽喉科へ相談しましょう。

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